リニューアル記念コラム

言語の目的である情報の収集と伝達、さらに分析をも含めた速さを競うだけならスーパーコンピューターに任せればいい。時間のスピードを追い求めれば将来人間はコンピューターの奴隷となる。効率が効率を呼び余った時間も時間が奪い余裕なき生活となる。
人間の脳は一つ一つを認知し思考記憶までもっていくまで時間がかかる。ましてや意志を反映させ行動するのにはもっと時間が必要です。この時間の隙間に人間としての情緒が育成される。生き物としてコントロールできる時間速度の中で生活している時こそが最も人間らしい生き方です。

AIは人間の知能、欲望(ゆめ)等を栄養として発達してゆく。別の見方をすると知能、欲望の増幅器なのだ。
人間は他の生物を食料として生存する。また、生活形式のなか、他者より裕福な生活を求め競争し諍いを起こし戦争してゆく。他の猛獣にはない欲望の塊である。もちろん人間の心の中には残虐性だけではなく慈悲や愛を支える理性もあるが。
この知能、欲望の増幅器は一部支配層の人間が他者を支配する手段として使いながらもいつかはAIそのものの意向に従ってしまう。人を奴隷にするか滅ぼしてゆくのか人間の心程愚かなものはない。

日本は狩猟採集する縄文時代が約一万年余続いた。日本人の意識には長い縄文時代の生活より涵養された草木、生き物等自然環境に馴染んだものがある。自然由来の象形文字に具体的対象を示す指事文字、それらを組み合わせて作る会意文字、更に発音を組み合わせた形声文字。目に映る自然を絵に描くことから発達した漢字に親しみを感ずるのはこんな事からではなかろうか。

人を番号に物を記号と数字に置き換えてシステムとプログラムで管理する現在、MR(医薬情報担当者)、BRT(高速輸送システム)等、業界や一部の人しかわからない用語が氾濫している。インターネット社会は見えない、触れない、感じさせられない環境、漢字の略語は「高校」が「高等学校」、「経産省」が「経済産業省」のように見るだけでおおよその概念は感じることができる。

「神の摂理に反するものは神の摂理に滅ぼされる」
(とは言え)技術革新は指数関数的に進歩していく。意思伝達としての言語が遠い将来は神経伝達を介した電気信号で行われるようになるかもしれない。口で言葉を発し耳で聞き目で見て脳で考える時代の終焉。これからは疑似体験、バーチャルリアリティーと発展しついには人工肉体に自分の脳を組み込み更に量子コンピューターと連動させた人間?が優秀とされる時代が来るかもしれない。生物(人)の脳は劣化、老化があり機械にとって成長速度も遅い。とっても効率が悪い。それでは・・・。

漢字多助 外部編集委員
玉田 光昭