より良い印刷物を仕上げるために

印刷用紙は、印刷物の用途によって、どれを使うべきかを決める要素になります。「紙」の種類はバラエティーであり、それぞれに厚さや色・つやが異なります。そして、インクの刷色で印刷効果に影響を及ぼします。そこで「紙」の基礎的知識があれば、幅広い選択が可能となり、より良い印刷物が仕上がることになるでしょう。

紙の種類

非塗工紙(ひとこうし)

表面に白い塗料を塗工していない紙。
ツルツルしていないので、鉛筆でも普通に書くことができます。
読む文字数が多かったり、記入する用途に合っています。

上質紙広く使用される代表的な印刷用紙。
書籍、教科書、商業チラシ、パンフレットなど幅広く使われます。
特に書籍用を目的に仕上げたものは“書籍用紙”と呼ばれます。
クリーム上質紙淡いクリーム色に仕上げた上質紙。
中質紙上質紙よりも白色度の低い紙。
色上質紙上質紙に染料で着色した紙。
冊子の表紙や、1枚もののチラシやチケット、または注文用紙のような筆記を前提とした印刷物など目立たせたい目的に幅広く使われます。
ファンシーペーパー模様や色、様々な風合いの紙。
用途は幅広く、本の装丁では表紙・見返し・カバー・帯に使われたり、一般の紙で作られた本より独特の感覚を演出し、存在感を示してくれます。

塗工紙(とこうし)

表面に施した白い塗料の塗工の量と仕上げ加工により、印刷効果を高めた用紙。
インクが綺麗に載って、カラーを見せたい用途に合っています。

スーパーアート紙高精細な印刷効果を得られる高級アート紙。
アート紙美術・芸術品の写真など見栄えの良い印刷効果を目的にした紙。
コート紙写真など4色印刷の再現性を得られ、広く使用される代表的な塗工紙。
マットコート紙光沢が抑えられ落ち着いた印象を与えられます。
カタログ、パンフ、チラシなど写真と文字が混在する4色印刷にも使われます。
微塗工紙若干の塗工によりある程度の印刷効果が得られ、風合いのある銘柄もあり、書籍やパンフレットなど多くの用途に使われています。
アートポスト、高級板紙塗工した厚い紙で、表紙や箱などに多く使われます。

紙の厚さを表すのに㎏?

印刷業界では、紙の厚さを表す単位に㎏を使います。

連量

各規格寸法の1000枚を1連(1R)とし、その重量をkgで表します。
同じ銘柄で同じ寸法なら、もちろん重い方が厚くなります。
例えば、

  • 70kg … コピー用紙ぐらい
  • 150kg … 郵便ハガキぐらい

※板紙の場合は厚くて重いので、100枚を1ボード連(1BR)とし、その重量をkgで表します。

坪量(つぼりょう)

1㎡の面積あたりの紙の重量(g/㎡)を表します。
プリンターで紙の厚さを設定する際に表示されたりします。
例えば、

  • 普通紙 … 坪量64~82g/㎡
  • 厚い紙 … 坪量91~105g/㎡

印刷業界では大量の紙を一度に注文するので、様々なサイズの紙を一枚当たりの価格で売買すると煩雑で効率が良くないため、「重量」単位での取引が主流になっています。

紙の大きさ

紙のサイズには、大きく分けるとA判(国際規格)とB判(日本国内の規格)があります(それぞれの一回り大きいサイズが菊判と四六(しろく)判になります)。どちらのサイズも短辺と長辺の比率が、1:√2となっています。この比率は白銀比と呼ばれます。白銀比は古くから法隆寺の五重塔や伊勢神宮などにも利用され、日本人に馴染みのある美しい比率と言われています。
※Q&A参照

注意するポイント

紙の流れ目(目なり・逆目、縦目・横目)

紙を製造(抄造)する過程では、水とパルプを一方向に流すため、繊維の向きが進む方向に揃います。それによって“紙の目”が発生します。
紙の目に沿って破ると、真っ直ぐに破り易く、垂直に破ると曲がって破り難いです。
紙の目に沿って折ると、綺麗に折れ、垂直に折ると綺麗に折れず折り目が割れることがあります。

紙に関する素朴なQ&A

月日が経つと紙が黄ばむのはなぜですか?

真っ白な紙がしばらく経つとなんとなく黄ばんでくることがあります。これは紙の原料のパルプの元となる木材に含まれるリグニンという物質が、日光の紫外線によって化学変化を起こすことで生じます。上質紙は、薬品によってリグニンが出来るだけ取り除かれているため、中質紙と比べて黄ばみ難くなっています。また、淡いクリームの紙は目に優しく読み易いだけでなく、長期間経っても黄ばみが分かり難くなっています。

紙のサイズは、どのように決まったのですか?

A4、B5などの紙の規格サイズがあります。A判は古くはドイツの規格でしたが、現在では国際規格になっています。A1、A2、A3、A4、A5というふうに、A判の長い方の辺を半分にする度に数字が大きくなり面積は半分になっていきます。B判は、日本で江戸時代からの美濃紙の大きさをもとにした日本独自の規格です。

紙の良さとはなんですか?

例えば、本について考えてみましょう。電子書籍と比べ、本の存在感、本の頁をめくる触感、音。読み進めるにつれ、読み終えた頁がどんどん増え、残りの頁がどんどん減ってくる実感があります。読書の過程で、紙って意外と重要な演出をしていることにふと思いあたります。
または、商業DMやチラシ、パンフについて考えてみましょう。捨てられるにしても、手に取ったら見なければ大概は捨てられません。コンテンツが良ければ、思わず読み込んでしまうでしょう。

紙の個性について教えてください。

紙は銘柄によって個性があります。光沢があってきれいな風景を再現できる銘柄、艶消しで独特の風合いを出せる銘柄、光が反射せず文字が読みやすい目に優しい銘柄、モノとして存在感のある手触りの銘柄など、様々な特性を持つ銘柄があります。用途によってどんな紙を選択するかは、コンテンツの表現に大きく影響します。

紙の種類って、どのくらいあるのですか?

それぞれの製紙メーカーで各品種ごとに多くの銘柄があります。また、同じ銘柄でも厚みのバリエーションも様々あります。細かく分けると数千種類になります。用途に応じた最適な「銘柄」を選ぶためにも、紙のプロのアドバイスをお勧めします。